NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)は、2019年3月31日、「サステナブル投資残高調査2018」を公表しました。この調査によると、日本の機関投資家による2018年のサステナブル投資残高は前年比1.7倍の231兆5千万円でした。総運用資産残高に占めるサステナブル投資の割合は、前年の35.0%から6.7ポイント増加の41.7%と投資残高、投資に占める割合ともに大きく増加しました。

 本調査におけるサステナブル投資の定義は、前年調査までは以下の2つの原則を満たすものと定義しています。

  • 地球と社会の持続可能性を配慮した投資であること
  • 原則1の投資プロセスや社会的な効果を資金の供給者に対して開示していること

 2018年調査より、上記の2つの原則に加えて、以下の定義が加わりました。

「投資分析や投資ポートフォリオの決定プロセスに、環境、社会、ガバナンス(ESG)などの課題を勘案し、投資対象の持続可能性を考慮する投資」

 今回の調査では、JSIFのアンケート調査への回答があった42機関のサステナブル投資の状況をまとめたものです。調査に回答した機関投資家の数が前回32機関から42機関と増加しているため、単純な経年比較は難しいが、積極的にサステナブル投資への取り組みを進めている機関が増えていることが伺えます。

 運用手法別で最も多いのは、エンゲージメントで31.2%、続いて多かったのが議決権行使で29.2%、3番目はESGインテグレーションで26.9%でした。ESGインテグレーションは前年比で182.8%と大幅に増加しています。

 資産別では、日本株が前年比130.8%増の137.4兆円、外国株が前年比152.7%増の80兆円となり、主要資産のサステナブル投資が本格化したことが伺えます。その他、ローンが大幅に増加し10兆円台になっています。調査の詳細は以下のリンクをご覧ください。

サステナブル投資残高調査2018(ここをクリック)

 なお、本調査は、Global Sustainable Investment Allianceが2年ごとに行っている“Global Sustainable Investment Review”に利用されています。こちらの調査では、世界の地域別のESG投資の状況を知ることができます。

Global Sustainable Investment Review 2018(ここをクリック) 

2019年3月に公表された“Global Sustainable Investment Review 2018”によると、世界の2018年におけるサステナブル投資残高は、30,683USドルでした。前回の2016年調査では22,890USドルでしたので、34%の増加になります。その中でも日本の増加率が約3倍と非常に高くなっています。

 総資産運用残高に占めるサステナブル投資残高の割合が最も高いのはオーストラリア/ニュージーランドで、運用総資産残高のおよそ2/3がサステナブル投資ということになります。特に2014年以降の増加率には特筆すべきものがあります。また、日本とカナダも割合を大きく高めています。しかし、日本はまだ運用資産の20%ほどで、他地域と比較してサステナブル投資の伸びしろが大きいと言えるでしょう。

 サステナブル投資資産の地域別比率では、ESG投資の本場であるヨーロッパが46%と一番多く、次いで米国の39%となっています。日本は7%となっており金融市場の規模からすると割合が小さくなっています。

 サステナブル投資の戦略別の内訳では、アルコール・タバコ・ギャンブル・軍事など関連する企業を投資対象から除外するネガティブ・スクリーニングが最も多く、次いでESGインテグレーションという通常の投資判断プロセスにESGの要素を組み入れた手法が多くなっています。特にESGインテグレーションは、前回調査(2016年)と比較して、約1.7倍と大きく増加しました。これは、ESG投資が投資手法としてより一般化していることを示しています。今後もESGインテグレーションが増加する傾向は続くと思われます。

 これまで、機関投資家によるサステナブル投資の動向を紹介してきましたが、個人向け金融商品における2019年3月末時点でのサステナブル投資残高につきましても、JSIFの調査結果が5月16日に公表されました。個人向けに関しては、直近10年間で景気変動による増減はあるものの、大きな変化はないと考えられます。詳細は、以下の資料をご覧ください。

個人向け金融商品におけるサステナブル投資残高(ここをクリック)