2019年6月7日、政府は「平成30年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)」を閣議決定しました。この「エネルギー白書」は、エネルギー政策基本法に基づき、政府がエネルギーに関して講じた施策の概況ついて、国会に提出する報告書です。例年、エネルギー白書には、エネルギー動向、前年度において実施されたエネルギー需給に関する施策の状況について記載されています。これらの内容に加え、今年の白書では、以下についても紹介されています。

(1) 福島復興の進捗

  • オフサイトおける避難指示解除等の状況
  • 汚染水対策(周辺海域の放射性物質濃度の低下)の状況
  • 廃炉(2号機内部調査、3号機燃料取り出し)の進捗状況 等

(2) パリ協定を踏まえた地球温暖化対策・エネルギー政策

  • 主要国の温室効果ガス削減目標と、その取組・進捗
  • OECD諸国の一人当たりCO2排出量の比較・分析
  • 再エネ比率と需要規模の分析、再エネ主力電源化の取組 等

(3) 昨今の災害への対応とレジリエンス強化に向けた取組み

  • 2018年に発生した主な災害の概要
  • 重要インフラの緊急点検とこれを踏まえた対策の進捗 等

「パリ協定を踏まえた地球温暖化対策・エネルギー政策」では、主要国(日、英、米、仏、独、EU)のGHG削減の中期目標とその進捗状況とその要因が説明されています。日本は目標ラインと同水準、足元も削減傾向であると説明されています。日本のエネルギー起源CO2排出は、一人当たり年間9トンで、OECD35か国中27位であり、需要側に強みがある一方、供給側に弱みがあるとされています。つまり、エネルギーを使用する市民や産業界のエネルギー効率や省エネは進んでいる一方、発電施設の温暖化対策(非化石燃料化、再エネ化)は進んでいないことが示されました。

出典:エネルギー白書2019

「再生可能エネルギーの導入加速」では、再生可能エネルギーの主力電源化に関する状況について説明されています。2018年策定の「第5次エネルギー基本計画」の方向性、再生可能エネルギーを取り巻く状況、課題と今後の方向性と具体的な取り組みについて説明しています。また、日本は「面積あたりの再エネ導入率」という新たな視点で再エネ導入状況を説明しています。「面積あたりの再エネ導入率は世界的に高水準だが、需要が大きいため再エネ比率は上げにくい。」とし、再エネ比率をこれ以上あげることが難しい事情を説明しています。

出典:エネルギー白書2019

また、原子力発電については、気候変動対策に貢献する「ゼロエミッション電源」と位置付けており、エネルギー基本計画のエネルギーミックスの見通しで示した20~22%に対し、現時点(2017年度)の比率が3%となっており、安全性を優先しつつ再稼働を進める必要性を強調しています。

関連リンク