88の機関投資家、環境情報の開示が不十分な企業へ情報開示を要求

企業に対して気候変動をはじめとする環境関連情報の開示を推進しているCDPは、2019年6月17日、自社の環境影響とその対策に関する報告が不十分な大企業に対して、CDP質問書への回答を通じて環境情報の開示を実施するように要求する集団エンゲージメント(Non-Disclosure Campaign)を開始したと発表しました。このキャンペーンには、HSBCグローバルアセットマネジメント、インベステックアセットマネジメント、キャセイフィナンシャルホールディングス、アムンディ、Candriam、NNグループなどをはじめとする世界の主要機関投資家88社が参加しており、その運用資産残高は約10兆米ドルになります。

キャンペーンの対象企業

今回のキャンペーンで環境情報の開示要求を受けた対象となった企業は、エクソンモービル、BP、シェブロン、アマゾン、ボルボ、アリババ、カンタス航空など世界の主要企業707社です。この中には、日本企業約30社も含まれています。このうち、546社が気候変動、166社が水の安全保障、115社が森林破壊に関する情報開示が不十分と指摘され、その情報開示を促進することを目的としています。

日本企業の対象企業

日本企業でキャンペーンの対象となったのは、以下の29社です。
エーザイ、オリエンタルランド、キーエンス、キッコーマン、キョーリン製薬、SANKYO、資生堂、シマノ、しまむら、セブン&アイ・ホールディングス、ソフトバンクグループ、大成建設、中国電力、東洋水産、日本マクドナルド、任天堂、光通信、ピジョン、ファーストリテイリング、ポーラ・オルビスホールディングス、HOYA、本田技研工業、マキタ、みらかホールディングス、森永製菓、ユニー・ファミリーマート、ヤクルト本社、リンナイ、ローソン

今年の気候変動情報開示の対象となる業界は、サービス業が全体の27%、製造業が18%、化石燃料12%になります。水の安全保障に関しては、製造業26%、小売業23%、化石燃料11%となっています。森林伐採に関しては小売業30%、食品・飲料・農業26%、製造業16%となっています。対象企業の所在地は、米国が140社、オーストラリアが114社、中国が59社、フランスが36社、カナダが30社、日本が29社となっています。

キャンペーンの目的

この投資家エンゲージメントは、株主の影響力を利用してCDP質問書への回答による環境情報の開示を促すことで、気候変動、森林伐採、水の安全保障に関する企業の透明性を高めることを目的としています。CDPの投資家イニシアティブのグローバルディレクターであるEmily Krepsは、次のように述べています。「気候変動、水の安全保障、森林伐採は投資に重大なリスクをもたらすことを私たちは知っていますが、これらのリスクは適切な情報なしには管理できません。」

企業によっては、自社のサステナビリティレポートに既に開示しているから問題ない、と言うかもしれませんが、それだけでは十分ではないと言えるでしょう。投資家および株式市場にとって、情報の入手と比較、ベンチマークが容易な、一貫性があり、比較可能で、関連性のある測定基準という形の透明性が必要だといえます。

関連リンク

CDPプレスリリース(こちらをクリック)